まえがきより抜粋
過去60年の間に作用の強い、優れた医薬品が数多く生み出され、健康福祉に貢献しましたが、また同時にサリドマイド事件、HIV感染、ソリブジン薬害など多くの重篤な健康被害も起こしてしまいました。また、バイオサイエンスの発展に伴い、新薬の研究と開発には多額の費用と長い年月がかかるようにもなりました。そして、医薬品開発には有効性と安全性の検証のほかに、最近では医薬品の適正使用情報の確保が大きくクローズアップされています。そして今日、従来の古典的な医薬品開発に代わって、分子生物学を基礎にラショナルで、効率的な医薬品の研究開発の戦略と戦術が必要とされる時代が到来したのです。
本書の1部の編者・執筆者は平成12年に「教科書シリーズ・創薬化学」(丸善)を著しました。この初版本は薬系大学などで講義のテキストや副読本として使われ、5刷を重ねました。本書はこの初版の内容を大幅に改訂し、新たに書き下ろしたものです。改訂版の作成にあたっては、初版に盛り込めなかった医薬品や初版出版後に開発された画期性の高い新薬を盛り込みました。また、作成にあたっては大学の先生に加えて、製薬企業において豊かな新薬研究開発の実務経験をもつ多くの方々にご協力を頂き、自らの経験を踏まえた内容を多く盛り込むように心がけました。さらに、前版と同様、教科書的な堅苦しい表現はできる限り避け、肩が凝らず、読んで頂けるようにも配慮しました。
本書は22章で構成されています。最初の2章では創薬にかかわる科学と技術の流れ、医薬開発の今日的な考え方や進め方、さらには新薬開発から市販後にわたる規制や制度の概要を記しています。他20章は個々の医薬品や薬効群における新薬の研究開発の事例紹介を中心に構成し、創薬の発想や、研究開発過程における多くの試行錯誤の有様を紹介しています。「単に事実を平易に綴った物を読んでも何の感情も伝わらない。重要なことは、その時、当事者が何をどのように考え、どのように行動したかである」と言われます。本書が創薬にかかわる科学・技術の真髄の理解や研究開発戦略の立案の一助となり、創薬に興味を持つ人、創薬を志す人、医療現場で医薬に携わる人々に創薬の面白さとロマンを感じていただき、いささかなりとも創薬と育薬、薬の適正使用の後押しとなれば幸いです。
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