新しいコンサルテーションをめざして

  はじめに
 多くの製薬企業は、研究開発、生産、販売といったすべての組織を保有する「自己完結型」企業である。しかし、薬事行政の強化により、審査基準が厳格化し、新薬開発に要する期間が延長することにより、大幅な研究開発費の増加を招き、経営を圧迫する事態に直面している。さらに、最近、探索研究分野に登場して来た新技術―ゲノミックス、プロテオミックス、ハイ・スループットスクリーニング、およびコンビナトリアル・ケミストリーなどの新技術のすべてについて、世界最先端の技術を自社だけで保有することはいかに巨大な国際的製薬企業といえども困難である。製薬企業がグローバルなネットワークを通じて、外部ソースの活用を徹底することにより、何を所有するかではなく、どうすれば新薬開発がスムースに進行し、研究開発費を低減できるかである。製薬企業は知識集約型の産業で、創造性と独創性の頭脳が要求されるので、アウトソーシングとしてのコンサルティングの活用はますます重要視される時代になった。

新薬の研究開発のためのコンサルテーション
 医薬候補品が開発過程で問題が生じ、その後の開発中止を余儀なくされることは多くの製薬企業で経験されていることである。開発中止の要因は個々に特定されるものではなく、幅広い要因が考えられる。したがって、研究開発の進め方に大義王道があるわけではなく、失敗の経験から学ぶ姿勢が要求される。ところが日本では情報の価値というものをあまり高く評価しない傾向がある。医薬候補品を選択する過程で、現在まで得られているあらゆる情報を駆使して、「この化合物を選択することに問題はないか」を充分吟味した上で化合物選択が行われなければならない。化合物選択の問題点を掘り起こす作業は過去の失敗の経験が重要である。失敗の経験の少ない製薬企業は開発を中止するリスクは大きいと言わざるを得ない。ここにコンサルテーションの重要性が存在するのだが、多くの製薬企業は化合物選択の意思決定は研究現場の意思決定に任せているのが現状である。開発の中止要因はその化合物固有の性質で、化合物が選択された時点で、開発の中止要因はすでに決定されている。従って、その後問題点が見出され開発中止を余儀なくされても、もはやどうすることもできない。このような重大な意思決定を探索研究の早い段階でしなければならないところに開発のリスクがある。そのリスクを最小限にするため外部コンサルテーションを活用することは戦略的創薬研究を推進する上で重要な課題である。


新しいコンサルテーションのあり方

 従来のコンサルテーションは医薬開発過程で問題が生じたときどのように解決すべきか、その問題が申請、許可、上市などの過程で開発中止を余儀なくされるほど重大な問題かをコンサルティングするのが一般的である。また効率的な開発の進め方をコンサルテーションする場合もある。いずれも化合物がすでに選択された後でのコンサルテーションなので、その効果は充分ではない。やはり、探索段階から開発段階、臨床、申請、許可所得までの新薬開発全体に関連する意思決定に関与するコンサルタントでなければあまり意味はない。単に開発プロセスに関する事項だけでコンサルテーションするのでは研究開発の効率化にはつながらない。選択された化合物を開発すべきかどうかの意思決定にかかわるものでなければ開発コストの低減にはつながらない。製薬企業にとって研究開発の効率化と研究の機会損失は重大な関心事になっていることから、質の高いコンサルテーションを受けることが重要である。グローバル製薬企業において、戦略的コンサルテーションの重要な第一歩、すなわちコンサルタントの決定はその半数が研究者個人のネットワークによって推進されているといわれている。したがって、研究者が良好な人脈を築き維持していく必要性とその効果はいくら強調しても強調しすぎることはない。
 ゲノム創薬研究が盛んにグローバル製薬企業を中心に行われている。  薬剤開発の標的として、レセプターに対するアゴニスト、アンタゴニスト、酵素の阻害剤、情報伝達物質の刺激剤、蛋白酵素(リン酸化など)の阻害剤などが考えられる。
 病気の原因となる遺伝子産物の発見なしに、遺伝子産物たる蛋白分子を標的とする新薬の開発は難しい。
 蛋白質修飾酵素の標的遺伝子が決まれば、その遺伝子の機能を増強、抑制する有機化合物の発見のきっかけを作る。 すなわち、創薬研究のためのシーズができる。 次に、HTS,コンビケム、ランダムスクリーニングなどからリード化合物を発見する。  酵素蛋白のリガンド、receptorを修飾できる有機化合物、蛋白ー蛋白相互作用を阻害する低分子化合物などのin vitroで活性を有する化合物は物性、代謝、消化管吸収などの薬物動態に問題を生じる場合が少なくない。 ここに、創薬代謝研究の重要性がある。


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